1)医薬品開発に必要な「全般的な知識」を知る!

                     医薬品開発の流れ, 基礎試験, 臨床試験, 申請業務,

 このブログを書くきっかけになったのは、冒頭の「本ブログについて」でもお話ししたように、新型コロナウイルスの流行を契機として、一般の方々や患者さんの間で、医薬品の緊急承認や副作用に対する問題、またここ1~2年の間に幾つもの後発医薬品a)会社の医薬品医療機器等法(医薬品等に関する法律:以下「薬機法」と略します)の違反による業務停止、その結果としての医薬品の供給不足に対する不安など、医薬品に対する一般の方々や患者さんの関心が高まっている事から、先ずは、通常医薬品はどのように開発されているのか、どのように解決しようとしているのか、結果として、安心してお薬を飲んでも大丈夫なのかをお話ししたいと思います。

a) 後発医薬品とは、先発医薬品会社が開発した新薬の特許期間が過ぎた後に販売される、その新薬と同じ成分を含む医薬品の事です。

何か難しそうだけど理解できるかな?

出来るだけ分かり易く説明しますので、安心してください。

 第1回目は、医薬品(このブログでは医療用の医薬品b))について、候補になる物質が実際にヒトに使用される迄の開発の全般的な流れについて、説明したいと思います。

b) 医薬品は大きく2つに分けられ、医師の処方箋がないと服用できない医療用医薬品と、ドラッグストア・薬局などで処方箋なしで購入できる一般用医薬品(市販薬)があります。

 新薬を開発するには、次の図に示すようなステップで10年以上の年月と数100憶円の費用を掛けて進めています。しかし、数多くの開発候補品の中から、最終的に承認が得られ、発売されるのは、1~2 製剤と、ビジネスとしては、割に合わない一面があります。

   ここでは、以下の5項目について説明を行います。
   (1)新薬候補の探索、開発化合物の発見
   (2)非臨床試験
   (3)臨床試験
   (4)PMDAc)、厚生労働省への承認申請
   (5)製造販売後調査・試験

c)PMDAとは、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency )のことで、医薬品等の品質、有効性およ安全性について、治験前から承認までを指導・審査する厚生労働省所轄の独立行政法人です。

PMDA

それでは、1項目ずつ、概略をお話したいと思います。

(1)新薬候補の探索、開発化合物の発見

・新しい「お薬」の候補品を見つけるには、一般的は化合物の合成、培養、抽出によって、候補品を集め、効果があって、毒性が少ないものを選び出す作業を行っています。現在では、さらに、目標とする疾患の原因を先に解明し、例えば遺伝子欠損が疾患の原因になっているなら、それをターゲットにして、効果があって安全な化合物を探す方法も行われています。

(2)非臨床試験

・候補品が見つかったら、次にヒトを対象とした臨床試験を行う前に、試験管内での試験、あるいは限られた数の動物を用いた非(前)臨床試験が行われます。

非(前)臨床試験については、次の4つの項目について、説明していきます。

① 原薬の物理化学的特性、規格試験法、安定性試験
・「お薬」の成分を原薬と呼びますが、先ず、原薬がどのような性状を持っているか(水や油に溶けやすいか、光に安定か等)、どのようにして成分の量を測定するか、不純物はどの位含まれるか、どのようにして精製するか、あるいは、どの位の期間分解されずに安定か等の試験を行い、化合物が設定する基準に常に適合するものであるように検討を行います。これは、先々その薬の製剤が出来た場合にも、同様な基準を設ける事になります。

② 一般毒性試験及び特殊毒性試験
・一般毒性試験では、単回投与毒性試験、反復投与毒性試験、生殖発生毒性試験、遺伝毒性試験、がん原性試験等、特殊毒性試験では、皮膚・粘膜刺激試験、免疫毒性試験、発熱性物質試験、エンドトキシン試験等を行います。

③ 薬効薬理試験及び安全性薬理試験
・薬効薬理試験では、対象となる疾患に対する効果があるかどうか、どの位の量で作用が出るか等を検討します。一方、安全性薬理試験では、全身の臓器への影響を見るため、中枢神経系、心臓血管系、呼吸器系等にどのような影響を及ぼすか等の検討を加えます。

④ 薬物動態試験
・薬物動態試験では、例えば口から「お薬」を飲んだ場合、どの位の量が体の中に取り込まれるか、どの位のスピードで取り込まれるか、身体の各臓器にどの位の量のお薬が集まるか、どのような経路で作用がなくなるように無毒化(代謝)されていくか、どのようにして身体から排泄されていくかを検討します。

(3)臨床試験

・ここ迄の試験で、対象とする疾患において、その「お薬」候補のベネフィット(効果-有効性)がリスク(安全性)よりも、優れている場合には、PMDAに治験届d)を提出して、ヒトにおける臨床試験(正式には治験と呼びます)を行うことになります。

d)治験届とは、治験を行う場合には、治験に参加する病院に治験の依頼を行う30日前には、この治験の依頼を科学的に正当と判断した理由書、治験の試験内容を記載した計画書、患者さん用の同意書と同意説明文書、治験のデータを記載するための記載用紙(症例報告書:但し、記載すべき内容が計画書から読める場合には提出不要)、国内、海外で、これまでに得られているすべての試験成績をまとめた概要書をPMDAに提出し、確認を受ける必要があります。

臨床試験は3つのステップに分けて行います。

   ① 臨床第Ⅰ相試験
   ② 臨床第Ⅱ相試験
   ③ 臨床第Ⅲ相試験

それぞれについて説明します。

① 臨床第Ⅰ相試験
・同意を得た少数の健康成人男性の志願者を対象にして、「お薬」の安全性を検討する試験です。

② 臨床第Ⅱ相試験
・対象とする疾患を有する少数の患者さんを対象に有効で、安全な用法・用量、あるいは投与方法を探索するための試験です。

③ 臨床第Ⅲ相試験
・対象とする疾患を有する多数の患者さんで「二重盲検試験」等により、これ迄使用されていた既存薬と比較して、新しい「お薬」の有効性と安全性を検証するための試験です。

二重盲検試験って、どういうことですか?

二重盲検試験とは、新しい「お薬」とこれまでの既存薬とを比較する試験ですが、この試験のために、両方の薬剤を外見上は、誰が見ても違いが分からないような薬を作り試験をするもので、医師も患者さんもどちらの薬剤を服用しているか分からないようにして、主観的なバイアス(思い込み)を除いた方式で行う試験のことです。どの新薬も、通常は、このような試験をして評価されています。

(4)PMDA、厚生労働省への承認申請

・臨床試験の結果、新しい「お薬」が、これまでの既存薬と比較して、明らかに有効で、安全である場合には、新しい「お薬」の起源、発見の経緯、開発の経緯、効能効果、用法用量、添付文書等の全体像を纏めるとともに、その根拠となる国内、海外で実施した全ての試験データを纏めて、PMDAへの承認申請資料を作成し、提出する必要があります。
PMDAに提出した申請資料については、対象となる疾患の専門家を含むPMDA内のチーム審査、製造販売企業との面接審査会等を経て、問題が全てクリア出来た場合には、厚生労働省大臣が薬事・食品衛生審議会に諮問し、厚生労働省の大臣が承認する事になります。

(5)製造販売後調査・試験

・厚生労働省大臣の承認を受けると、新しい「お薬」を販売することが出来ますが、製造販売会社は、引き続き「製造販売後調査ないしは試験」を、実際の臨床の現場で実施する事になります。「製造販売後調査」の期間は、薬剤によって異なりますが、通常は8年間の特許期間(正式には再審査期間と呼びます)の間に、新しい「お薬」の有効性と安全性に関するさらに多くの臨床成績を収集し、再審査期間終了後に試験成績を纏め、PMDAに再度申請し、より適切な使用方法を確立する事になります。

再審査とは、どういう意味ですか?

当局から新しいお薬の承認を取った後も、先発医薬品企業は、引き続き、実際病院で新薬が使われた場合の成績(有効性や安全性のデータ)を集めて、薬剤によって、4年~10年後に再度、PMDAに申請して、より適切な使い方が出来るようにするための制度です。

【今回のお話の纏め】

  新しい「お薬」を開発するには、全体の流れとして「お薬」の候補の探索から始まって、試験管内、あるいは動物を用いた非(前)臨床試験の実施、次いで健常成人男性あるいは患者さんを対象とした臨床第Ⅰ相から第Ⅲ相迄の臨床試験を実施して、試験成績を纏め、PMDAに申請して、通常約 1 年間の審査期間ののち、問題がなければ承認を取得する事が出来ます。さらに、承認取得後も製造販売後調査を再審査期間中に実施して、調査成績を纏め、PMDAに再度申請し、適切な使用方法を確立する必要があります。

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