8)医薬品開発に必要な「医薬品製造」を知る!

                      医薬品開発の流れ, 基礎試験, 臨床試験, 申請業務,

今回のテーマは「医薬品製造」という事ですが、どの辺が一番ポイントになりますか?

第3回目の非(前)臨床試験のお話をした時に、「医薬品等の製造管理及び品質管理の基準」として、GMP (Good Manufacturing Practice)というルールがある事を少し話しましたが、これをしっかり守って医薬品を製造する事が一番重要です。

   GMP適合性調査業務(PMDAのサイトより)
   https://www.pmda.go.jp/review-services/gmp-qms-gctp/gmp/0001.html

 第8回目のテーマとしては、最初にGMPのルールについてお話しし、その後、医薬品が工場で製造される全般的な流れについて、説明したいと思います。

 先ずは、GMP (Good Manufacturing Practice) についてですが、その定義と3原則のお話をします。

(1)GMPの定義

・GMPとは、「医薬品等の製造管理及び品質管理に関する基準」で、品質の良い優れた医薬品を製造するための指針を纏めたものです。医薬品は、患者さん、一般の方々の健康・生命に直接関わるものですから、その品質はきわめて重要で、不良品を患者さんが使用するようなことは、絶対にあってはならない事です。
・そこで守るべきルールとして、GMPと呼ばれる医薬品等の製造所における製造管理、品質管理の共通基準が省令として制定されました。GMPは原材料の入荷から製造、最終製品の市場への出荷にいたるすべての過程において、製品が安全に作られ「一定の品質」が保たれるよう定められており、この基準に適合しなければ医薬品を製造販売することは許されません。

(2)GMPの3原則について

・GMPの3原則とは、誰が作業しても、いつ作業しても、どこで作業しても、必ず同じ品質・高い品質の製品をつくるために実施すべき事を規定したものです。そのためには、以下の3原則を達成する必要があります。

    1)人為的な誤りを最小限にする。
    2)医薬品の汚染及び品質低下を防止する。
    3)高い品質を保証するシステムを設計する。

・また、GMPの3原則を達成するためには、ソフト面(管理面に関すること)とハード面(工場の構造・設備に関すること)の対応が必要になります。
-ソフト面としては、ルールを決めて、そのルールを書類に残す。そのルールに従って作業を行い、それを記録に残して証拠にする。そのルールを定期的に見直して、作業内容を改善する。
-ハード面としては、間違いを防ぐことが出来る構造・設備の工場である。衛生的な構造・設備である。高い品質を確保できる構造・設備の工場である。

 次に、GMPの3原則について、少し詳しく説明します。
1)人為的な誤りを最小限にする。
・人為的な誤りを最小限にするために、次のような事例が挙げられます。
(ⅰ)ソフト面
 - 各部門に責任者を設け、責任体制を明確化させる。
 - 標準的な規格及び作業手順を文書で指定しその通り実施する。
 - 重要な工程は、複数のチェック(ダブルチェック)ができる体制をとる。
 - 医薬品の品名、ロットNoなどの識別表示を実施する。
 - 作業したことの記録をとる。
 - 職員へ作業に関する教育訓練を実施する。
(ⅱ)ハード面
 - 作業に支障のない広さ、レイアウトに配慮する。
 - 混同防止のため、各作業室を物理的に隔離する。

2)医薬品の汚染及び品質低下を防止する。
・医薬品の汚染及び品質低下を防止するために、次のような事例が挙げられます。
(ⅰ)ソフト面
 - 作業室の清掃、設備の洗浄などの衛生管理を予め設定した手順に従って実施する。
 - 職員に対する衛生教育を徹底する。
 - 職員の衛生管理状態を管理する。
 - 作業室への関係者以外の立ち入りを制限する。
(ⅱ) ハード面
 - ちり、粉塵等によって汚染された空気による医薬品への汚染を防ぐための構造・設備とする。
 - 各作業室を専用化する。
 - 医薬品を変化させない製造・設備の材質を選定する。
 - 清掃しやすいものにする。

3)高い品質を保証するシステムを設計する。
・高い品質を保証するシステムを設計するために、次のような事例が挙げられます。
(ⅰ)ソフト面
 - 品質部門(品質保証部と品質管理部)と製造部門を分離させる。
 - 設備、機械器具などの定期的点検・校正のシステムを構築する。
 - 各工程がバリデート(検証)されている。
 - ロットの追跡が最後まで行えるように、作業を実施し、記録を整備する。
 - 生産計画に基づき、計画的、合理的に試験、検査を実施する。
(ⅱ) ハード面
 - 作業室、機械、設備が、製造工程の順序に従って、合理的に配置されている。
 - 必要な試験が適切にできる試験設備を備えている。

・このようにGMPの3原則を満たすために遵守すべき事項について、ソフト面(管理面に関すること)、ハード面(構造・設備に関すること)から規定されています。 また、ここに示したGMPは、決して固定されたものではなく、科学技術の進歩を取り入れ、より良い品質を目指してGMPの内容を高めていくこともまた、医薬品製造に係わる作業者の使命でもあります。

  次に、新薬を製造するには、GMPの規定の下で、新薬の成分(原料)や資材の入荷・保管から、「お薬」の製造、試験、最終製品の市場への出荷に至る多くの作業が行われています。

 ここでは医薬品の製造方法について、4つのステップを説明したいと思います。

     (1) 原料・資材の入荷及び製品等の保管について
     (2) 製造工程について
     (3) 試験工程について
     (4) 製品の市場への出荷可否判定について

それでは、これら4つについて、順番に説明したいと思います。

(1)原料・資材の入荷及び製品等の保管について

1) 原料、資材の入荷 
・原料や資材が入荷されたら、初めに原料や資材の内容に応じて必要な受入れ試験を行います。ここで不適になったら、返品や廃棄などの処分を行うことになります。
2) 置き場所を区別する。
・場所の区別とは、原料、中間体、製品の入荷後の置き場所を混同しないように区別し、誰が見てもわかるようにする必要があります。また、同様に原料、資材、製品の保管場所もそれぞれ区別します。
3) 工場内の温度湿度の管理を行う。
・室温、低温で保存しなくてはならない原料や製品については、指定された条件で保管をします。温度が逸脱したら、品質を保証出来なくなるので対策が必要になります。
4) 原料、資材、製品等の整理整頓を行う。
・原料、資材、製品等の先入れ先出しが容易に行えるように、整理整頓を行います。
5) 作業室、保管場所等を清潔にする。
・ゴミや埃がたまっている環境は清潔とはいえません。そうした場所には虫が発生することがあります。作業室や保管場所を清潔な環境にすることは、何よりも重要なポイントになります。
6) 保管・出納の記録を取る。
・原料や資材、製品の保管や出納に関しては、記録に残します。

(2) 製造工程について

1) 工場内の設備の清掃・保守・洗浄を行う。
・製造が行われる場所については、清潔な環境を保つことが基本で、ほこりや異物が発生・混入しないよう、最大限の配慮をする必要があります。また、清掃、洗浄の頻度を、あらかじめ手順書で決めておき、実際に手順書通りに行った内容を記録に残します。
2) 作業ルールを守る。
・製造作業を行うときの大原則は、製造指図書(指示書のようなもの)・手順書・作業ルールに従って作業を行い、実際に行った作業内容を記録する必要があります。
3) 作業室への入室時には、衛生を保つ。
・一番の汚染源は 「ヒト」 ですから、作業室へ入る時には、手洗いを行ったり、装飾品を外したり、頭髪は帽子の中に完全に入れる等、ルールを細かく決める必要があります。これらも異物混入・汚染防止という点から重要な項目になります。また、作業員の健康状態を把握して、熱があったり咳が出ていたりする人は作業に従事させない事が重要です。
4) 製造指図書通りに作業を行う。
・製造にあたっては製造指図書の内容と、製造する製品や資材の名称・ロット番号・数量などが合っているかを確認し、製造指図書通りに作業を行い、実際行った作業内容を必ず正確に記録に残します。
5) 作業の確認のためダブルチェックを行う。
・原料の秤量、ラベル表示の確認等の作業時には、作業者2人がペアーを組んで、ダブルチェックを行って、ミスを防ぐようにします。
6) 品質部門へ報告する。
・製造作業が終了したら、製造作業の結果を品質部門へ報告します。

(3) 試験工程について

1) 製造した医薬品について試験検査を行う。
・製造した製品からサンプルを採取し、厚生労働省が承認した「製造承認書」に決められた規格を満足させるものかどうか試験検査を行って確認をします。試験をした後には、結果を試験記録に記載すると共に、生データも証拠として残すことにします。試験検査の判定についても、予め承認書で定めてある判定基準に基づいて正しく判定する必要があります。
2) 測定機器の点検や校正を定期的に行う。
・試験検査に関する設備や器具については、正しい結果を得るために、日常点検や日常確認を定期的に行う必要があります。また、測定器が正しい計測データを示すように、定期的に校正(精度の調整)を実施します。
3) 試薬や標準品の管理を確実に行う。
・正しい結果が得られるように、試薬や標準品の管理や保管を確実に行います。
4) 参考品を保管する。
・流通した製品については、確認のため試験検査が行えるように、試験検査が2回以上できる量を、定められた期間、参考品として保管します。

(4) 製品の市場への出荷可否判定について

・製造工程、試験工程を終えたら、製品の市場への出荷可否の判定を行います。 製造部門で作成した記録や、品質部門での記録等を総合的に判断して、製品の出荷可否の判定を行います。

【今回のお話の纏め】

 「お薬」の製造を製造所(工場)で行うには、原料、資材の入荷から始まって、製造工程、試験工程、ラベル張り、梱包(箱詰め)、保管、市場への製品の出荷に至る全ての工程に対して、GMP省令(医薬品等の製造管理及び品質管理の基準)に基づいて作業を行わなければ、薬機法の違反となり、製品を販売することは出来ません。「お薬」は人の身体に作用をもたらすものである事から、製造された製品の品質が、常に確実なものでなければ、ヒトに対して不都合な作用を引き起こすことも考えられます。そのため、GMPでは、誰が作業しても、いつ作業しても、どこで作業しても、必ず同じ品質・高い品質の「お薬」が作れるようにするために、「お薬」を作る方法をルール化して、文書化し、製造時には常にその文書通りに実施し、作業を行なった内容を全て記録に残して、万が一基準から外れた場合には、その記録を見直してどこにミスがあったのか、どこが問題だったのか等を見直し、同じ間違いが2度と起こらないように、製造をする作業者に周知し、教育・指導して、常に同じ品質の「お薬」が製造できるようなシステムを構築しています。

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